帰郷②:「酒が主役ですから」~飛良泉本舗~

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秋田の1日目、新潟から秋田市に向かう途中、秋田県に入ってからわりとスグ、山形寄りにある「にかほ市」には「飛良泉」(ひらいずみ)というお酒を醸している飛良泉本舗さんがあります。飛良泉さんのラインナップには、山廃が多くみられているというのが特徴でしょう。

日本海沿岸近くに位置している飛良泉本舗さんの歴史は大変古く、開業は室町時代中期と、秋田県内では最古の蔵です。はじまりは廻船問屋で、酒造は副業とのことでしたが、明治に入ってから本業となり、その当時から
「山廃仕込み」を守り続けているそのこと。

きき酒師&日本酒学講師 和恵の愉快な生活
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仕込み水の井戸は、にかほ後援からパイプで引いてきているとのことで、貯水槽が3つあるとのこと。水質は硬水の部類に入るのだそうです。

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瓶詰ラインでは、ビンの傷やひび割れなどがないか、人の目で厳しくチェックが行われている様子が見れました。火入れしたお酒が瓶に詰められ、その後瓶ごと冷やされるのですが、その際には急激に冷やすのではなく、36度くらいのぬるい水をかけ、その後19度くらいの水をかけて冷やすというように温度に段階を付けているとのことです。

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お米を蒸す「釜場」を見せていただきましたが、主に使われているお米の種類は

・山田錦
・美山錦
・秋田酒こまち

ということでした。

培養室です。使用している酵母は醸造試験場から配布されるもの、および蔵オリジナルのものとのことですが、
試験場の酵母は「こまちスペシャル」という名前のものがあるのだそうで、「秋田はなんでも”こまち”を付けたがる」んだとかで。言われてみればそうですよね。新幹線とか飯米とかも。ほんとうだ(笑)。

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つづいて「酒屋の財産」と表現されていた、麹室。種麹をかけて寝かせられている麹ちゃんが居ました。ほかほかの部屋で布にくるまれている麹ちゃんは、赤ちゃんみたいで可愛いです。

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山廃酒母だけ造っている部屋、山廃の仕込みタンクを見せていただきました。泡あり酵母を使用されているとのことで、かなり高い泡がぶくぶく上がっていましたよ。放置するとタンクから泡があふれるので、プロペラのようなものがタンクの上の方で回りながら泡を消しています。が、昨年の震災の時には停電してしまったので、上がってくる泡を手作業で消すという大変な状態だったのだそうです。

きき酒師&日本酒学講師 和恵の愉快な生活
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で、山廃大吟醸の酒母は、モロミを仕込むタンクまで桶で運搬しているのだそうです。どうしてポンプなどで送ってしまわないのかといえば、ポンプで圧をかけることにより、味わいに変化が出てしまうということでして、手間はかかるのですが、飛良泉さんでは、この部分は人の手をかけて頑張らなければならないということでした。

上槽の段階、まさにフネから純米大吟醸のお酒が絞られている真っ最中でした。おいしそうだなぁー・・・と眺めていたら、試飲させていただけました(^^)とってもいい香り、そして多少のピリピリ感が生まれたてという感覚。山田錦の精米歩合35%でした。それにしても、これまでフネで絞られているさまに対面したのは、おそらく初めてだったかもしれません。飛良泉さんのお話では、フネの方が酒がやわらかになるみたいなんですって。

きき酒師&日本酒学講師 和恵の愉快な生活
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その他に、焼酎も2種類試飲させていただきましたよ。恥ずかしいながら、飛良泉さんの焼酎は初めていただきました。

楽しい見学も終わりを迎えたころ、雰囲気のある蔵の中にご案内いただきました。そうそう、飛良泉さんでは、貯蔵はタンクで行わずに、全部瓶詰してから行っているそうで!!そしたら調合の作業が大変ですねっ。これは、空気に触れる面積を少なくするためということでした。空気に触れる面積が多いと、香りから先に変化していってしまうということで。

きき酒師&日本酒学講師 和恵の愉快な生活
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さて、お連れい頂いた蔵の中には、長い間眠っているお酒達が沢山です。どんな味がするんでしょうね。なんて問いかけてみたところ、

「飲んでみます?」

・・・って、

いいんですかぁーーーーーーーー!?(嬉)

味見をさせていただいたのが、昭和62年のものでした。ワタクシが中学生の頃の酒。

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硝子のお猪口には、うっすらと綺麗に琥珀色がかったお酒が注がれ、観ているだけでもうっとりとした気分になりました。香りは特徴的な熟成香が感じられましたが、決してクセのあるものではなく、舌触りはとろぅん(?うまく表現できない)としていて、酸・甘・旨がしっかりしていて、リッチな気分になりました。

一緒に味見におつきあいいただいた飛良泉さんも「これ、うまいなぁ!!」(笑)。

とっても幸せで、楽しく、またご案内いただいた調合・濾過チーフを務めていらっしゃる齋藤さんの、秋田訛り全開の、温かでユーモアたっぷりのお話に笑いながら、終始楽しい見学となりました。

「酒が主役ですから」という言葉、そして、「20年間調合をやっているけど、一度として同じだったことはなく、わからないなぁ。」という言葉が印象的でした。生き物ですもんね。

大変お世話になりました!ありがとうございました♪♪

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蔵の敷地にあった氏神様。
ここには、お稲荷さん、松尾さま、弁財天などがまつられているそうです。大正時代に建て替えられたものだそうですが、柱がズレているのは昨年の地震のためです。元の位置に戻そうとしても、重くて動かす事が出来ません。

きき酒師&日本酒学講師 和恵の愉快な生活
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東北のお酒は地震後かなりのダメージを受け、飛良泉さんも昨年の夏ごろまでは大変厳しい状況に置かれていたそうです。が、その後東北のお酒を飲もうという動きが広がり、南部美人(岩手)をはじめとしたお酒が売れるようになり、前年比が160%くらいにまでなったそうです。

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