週末は家でゴロゴロすることがほとんどなく、何かしら活動をしているワタクシでございます。プライベートな時間が取れるときには旅をします。今回は富山県南砺市。世界遺産にも登録されている「五箇山の合掌造り」の地域へ出かけてまいりました。目的は三笑楽酒蔵さんへの訪問でした。
切り立った山々の色濃い緑、清らかで豊かな水が流れる庄川を眼前に眺めながらの道のりからは、美味しいお酒が生まれる地域であることが、ひしひしと感じられました。
三笑楽酒蔵さんに到着すると、専務の山崎氏がお迎えくださりました。「お酒造りには適した環境なんですけど住むのは本当に大変なんですよ~」と笑いながらお話を切り出されました。こちらの地域が水に恵まれているのは雪深い冬ということもありますが、伐採されず残っているブナの原生林の果たす役割も大きいとのことでした。ちなみに水質は軟水ということでしたが、こちらのお水は発酵力に富んでいるとか。
こちらのお蔵さんの創業は明治13年。「三笑楽」(さんしょうらく)のお名前、見ているだけで楽しい気持ちになっちゃいます!こちらの由来は中国の故事にあるそうで、お酒は楽しく笑って飲んでいただきたいという思いが込められているそうですよ。生産の9割が地元で消費されているとのことでした。
蔵にお連れいただきました。4人で造りを行っているとのことで、したが生産量から考えると少な目の人数で造りをされているとのことで、お酒の品質に直接影響しない部分(重いものを運ぶ作業など)に関しては作業効率を高めるための工夫がなされていました。
蒸し。以前は和釜を使用していたそうですが、現在はガスを用いる釜を使用されているとのこと。そんな話を聞きながら「釜割り杜氏」なんて言葉をお聞きしました。和釜でコメを蒸す場合、蒸す際に使う水の量を極限まで減らす(手鏡の厚さくらい残すことが良しとされていた!)と蒸気が乾燥蒸気になりいい蒸米ができる。しかし釜が割れることと紙一重になってしまう。ステンの釜だと乾燥蒸気を作り出すシステムになっているので釜を割る心配が無いという。
恥ずかしながら「釜割り杜氏」は初めてお聞きしたことでしたっ。
原料処理には特に神経を使っていらっしゃるとのこと。これはわりとどこの蔵さんでも同じではないかとのことでした。「一麹・二モト・三造り」という言葉がありますが、「一蒸し、二蒸し、三蒸し」というように神経を使うと。
麹室は改築してからまだ数年とのこと。上の写真の作業台(床(とこ))の下にはロードセルが入っていて計量できるようになっています。重さをはかることにより水分量がわかるわけですね。新潟の蔵さんは入れているところが多いようですが、北陸は少ないのだそうです。新潟の酒と石川の酒がどうして味わいが違うのかと言えば、それは麹の作り方が違うからだそうです。能登杜氏の麹造りは室で水分を飛ばして麹を乾燥させるということではなく、わりと水分を持った、菌糸のよくはぜた味の乗った麹を造るとのことでした。
また、全国の酒の味がなぜ違うのかと言えば、水とか米などの要因もあるが、突き詰めると麹がどのような状態でできあがっているのか、室がどういった環境なのかの影響が大きいのではないかとのことでした。
仕込み蔵については土蔵なので冬場でも温度は安定しています。もろみの発酵が進むと発酵によって発せられる熱と外気の寒さで蔵の中は大体5度くらいに保たれるということでした。仕込みの時期は冷却するためのマットを巻いているのだそうです。昔はマットを巻く必要が無いほど寒かったそうですが、やはり年々温暖化の影響はあるとのことで、マットを巻かないと温度管理が難しくなってきたということでした。
タンクは1200キロの小仕込みにして管理しやすいようにしているとのこと。使用しているのはすべて泡あり酵母とのこと!
現在は泡なし酵母を使用するお蔵さんが多い中、それはいかに!?
「泡あり酵母のほうがやっていて面白いから。あはは」
ということ。
泡が出るのでタンクをフルに使用できないことやもろみ日数が長いことなど諸々管理は大変だけど、泡を見ると酵母が今どういった状態になっているかがわかるのだということ。北陸で泡あり酵母を使っているのは三笑楽さんとあとひとつ?くらいかなとのことでした。ちなみに泡ありと泡なしだとお酒の味わいなどがどうなるかというと、一般的には泡なしのほうが酸が少な目になるようです(勿論ひとくくりにはできませんが)。
こちらは速醸の経過簿。折れ線グラフが上がっているところが暖気を入れたところ。
そしてこちらは山廃の酒母の経過簿。山廃の酒母は強いので1か月でもへたらない。速醸は暖気を4回くらいに対し、山廃は13回くらい。「山廃や生モトは日本の昔からの知恵が詰まっているので造っていても面白いし個性的なものができる。けど「造りました」だけではダメなんです。」
こちらは貯蔵タンク。三笑楽さんでは大吟醸を除いて、基本的にはタンク貯蔵をされるとのこと。空気と触れさせながら熟成させることでお酒の深さが出るからあえてとのこと。
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印象的な言葉はいくつもありましたが、「その味が自分に合うか合わないかはお客さんが決めればいいこと。少しでも興味を持ってもらえたら、そこには無限の世界が待っていますよ」と仰ったことが心に残ったとともに深く深く頷かされることでもありました。
「酒屋万流」といってお酒造りの工程は同じであっても、お蔵さんによって考え方が全く違うのだということも改めて実感しました。
「お酒の話をさせるとあと3時間くらいはしゃべりますよ」とおっしゃる山崎氏のお話はとても柔らかくてわかりやすく、穏やかな語り口調でありながらも、熱がビシビシ伝わるものでした。
やっぱりお酒の世界って楽しいなーーー!!と、猛烈に心躍らせながら三笑楽さんを後にいたしました。
この度は大変お世話になりました。
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三笑楽酒蔵さんWebサイト